2013 辻牧場レポート

2013 辻牧場レポート

辻牧場

辻牧場は明治43年創業の歴史ある牧場で、今昔幾多の活躍馬を生産しています。こちらでは3名の高校生男子が体験に参加しました。

主な体験メニューは馬の集牧、ブラッシング、寝わら作業、ボロ拾い、厩舎清掃、放牧地の石拾いで、繁殖牝馬の妊娠鑑定にも立ち会いました。
ブラッシングの体験では密接に馬と近づき、コミュニケーションを図りながら汚れを取り払い、毛並みを揃えました。「意外と汚れている部分があってびっくりした」、「繁殖牝馬は大人しかったけど、1歳馬はあちこち動く馬もいて、神経を使いました」と、参加者。肌に触れながら、馬との会話を交わしました。最初は恐る恐る伸ばしていた手も、慣れてくると迷いがなくなり、次第に馬の表情もリラックスしていました。

牧場の起伏に富んだ放牧地では、石拾いやボロ拾いの体験が待っていました。上質な草地は強い馬づくりの土台となります。彼らはそのことを意識しながら、黙々と石やボロを探し出し、リヤカーへと運びました。中には大きな石が潜んでいたり、長い草の陰にボロがあったり、焦点は尽きません。やっていることは地味ながら、それは機械に出来ない細かなこと。途中、通り雨に見舞われる一幕もありましたが、彼らは黙って放牧地に視線を向け、中腰を繰り返し、地面に手を伸ばしていました。

ファームステイ中は放牧中の馬をじっくり観察する機会にも恵まれました。1歳の群れには必ずボス的な馬がいることや、繁殖牝馬のたくましいお腹。競馬場では見られない光景が牧場にはありました。参加者の一人は「仔馬の方へ近づくと寄ってくるけど、触ろうとすると警戒して怖がるんです」と、不思議そうな顔。イメージ通りだったことだけではなく、「あれ?」と思った場面も少なくなかったようです。

宿泊時の夕食にはジンギスカンを味わいながら、辻義明さんとの馬産・競馬談議に花が咲きました。「牧場経営の大変さを知った」、「血統の話が面白かった」、「昭和の時代の話や、テンポイントの話が心に残りました」といった声が聞かれました。また、体験仲間との仲も深まり、異口同音に「同世代で馬の話ができることが嬉しかった」と、喜びを隠せない様子でした。

参加者を受け入れた辻義明さんは、
「やる気に満ちた子ばかりで、目の輝きが違うなと思いました。牧場の環境整備の体験が中心になりましたけど、手を抜くようなことなく、前向きに取り組んでいました。実際、裏仕事も大事ですからね。若い子たちがサラブレッドの世界に夢を持ってくれて、生産者として大変嬉しいです。近年、牧場の数は減少の一途を辿り、廃止に追い込まれる地方競馬もあり、馬産地は厳しい状況に置かれていますが、牧場の仕事でしか味わえない喜び、やりがいがあります。中小の牧場でも、昔のフェデリコ・テシオのように強い馬も生産できます。生産現場の魅力を今回の体験で伝えられたら幸いです。」
と、参加者のこころざしに太鼓判をおしていました。

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